自然界の掟
2006年 06月 28日
『何度巣に戻しても、バタバタして落ちてしまう。兄弟は巣立って、親鳥も来なくなってしまった。』と、ツバメの雛が持ち込まれました。
羽もしっかり伸びて来て、近々巣立ちを迎える程、成長したツバメ。
『何でこの子だけ巣立ちが遅れたんだろう?』と、不思議な位。
…でも、直ぐに訳が判りました。
脚弱です。
足がしっかり成長しておらずとても小さい。指は曲がった状態で伸びません。
栄養障害なのか、先天的なのか…。
大腿骨とフショの関節部分(人間で言うと膝かな?)が地面に付いて体を支えているので、
ベンチ(タコ)の様な状態になっています。
更に左翼はしっかり伸ばす事が出来ません。
巣から何度も落ちた時に傷めたのか、やはり栄養障害等なのか…
上手に羽ばたく事が出来ず、羽はしっかり生えてもう飛べるはずなのに、
地面を這う事しか出来ないのです。
親鳥は、巣立ち寸前までしっかり餌を運び世話をしました。
しかし、この子だけ飛べず、何度も巣から落ちてしまう。
兄弟達は既に次のステップ、飛翔訓練、餌を獲る訓練をさせなければいけない…
早く、兄弟達が親離れすれば、秋の渡りまでにもう一回繁殖出来るかも知れない…
そして、親はこの子を置いて行く事にしたのです。
この子の命は、土に還る運命だったのか…または、他の動物の命の糧になる運命だったのかも知れません。
決して冷たい選択ではありません。
厳しい野生界、自然界で生きている動物達の中では、ごく自然な事です。
野生動物達の生きている世界は、私達で言う『厳しい、過酷な世界』だと、目の当たりにしました。
良く『可哀想』と言われる事があります。
いえ、決して可哀想ではないのです。
生態系、野生界を知れば『弱肉強食』でなければ、どの生物も全滅してしまうと理解できます。
『弱肉強食』で無いのは『人間』の世界だけなのかも知れません。
動物全般から見れば、人間の方が『異生物 異生態系』なのかも。
死を待つばかりのツバメを放って置けない…
それは、人間特有の特別な感情。
このツバメの様な運命の子は沢山います。その子達を全て助ける事は出来ないでしょうし、助けてはいけないのです。
でも…何かの巡り合わせで、たまたま人間に保護され、たまたま私の所へやってきた…
せめてこの目の前の命だけは助けたい。
野生界に反していても…
この子の命が尽きるまでは…
飛びながら餌を獲ったり、長距離の渡りをするツバメの体の構造上、
飛べないツバメの長期飼育はとても無理があるし、困難です。
直ぐに腹部が糞で汚れてしまうので、清潔にしないと衰弱してしまうし、水入れも工夫をしないと、溺れてしまう事があります。
でも…私にやれる限りだけど、この子と向き合って行こうと思います。
by w-a-tracks
| 2006-06-28 00:02
| リハビリ